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銀塩写真とデジカメ

15年以上も写真を撮ってきているのに、デジカメが普及するまで「銀塩写真」という言葉を知らなかった。写真の原理を考えれば、なるほどね、とは思うが。しかし、確かに白黒写真では銀を使っていたが、カラー写真は異なるのではないのだろうか。白黒写真の名残りなのだろうか。それはさておき、銀塩写真とデジカメの比較について、様々な角度からまとめてみた。

銀塩写真とは?

銀塩写真の原理は、まさに化学反応のオンパレードで、白黒写真に関しては高校の無機化学でもたまに出没する(した?)。簡単に言えば、銀(Ag)の酸化還元反応を利用したものである。

銀塩写真の原理

この原理によるフィルムは、光のあたったところが逆に黒くなり、実際の色と反転(negative)するため、白黒/カラー共に「ネガフィルム」と呼ばれている。

カラー写真フィルムでは、光の三原色であるR(赤)G(緑)B(青)にそれぞれ反応する物質の塗られたシートを3枚重ねたものが使用されている。(フジフィルムからはより表現力を広げるため、紫の第4層を加えたフィルムが売られている。) しかし、白黒写真のときと比べて、1粒子の感度が弱いため、粒子が大きくなるのが欠点である。

ちなみにフィルムの感度は、基本的に粒子の大きさに比例する。粒子が大きければ光を受けやすく反応しやすいから。つまり、感度が高いフィルムは、粒子が大きいため、ざらついた写真になってしまう。(人を撮ると肌が「荒れた感じ」になる。) そのため、質の高い写真を撮る場合は、低感度フィルムで、明るいレンズを使う。また、同感度なら、白黒の方がきめの細かい写真が撮れる。

カラー写真で、きめ細かさの欠点を補うテクニックがある。「三色分解」と呼ばれる手法だが、白黒フィルムを用い、RGBの各色フィルターを使用して同じ被写体を3枚撮影し、印画紙で各色を合成する。天体写真の特に惑星の撮影に多用されていた。

他にはリバーサルフィルムを用いる方法がある。これはスライド用フィルムとも呼ばれていて、フィルムの色が反転しないで見た目通りの色になる。ネガフィルムと色が逆(reversal)なのでリバーサルフィルムと呼ばれていて、また、ネガ(negative)の逆なのでポジ(positive)フィルムとも呼ばれる。特徴としてネガに比べて、発色が良い、コントラストが高い、などが挙げられるが、ポジの原理を知らないので何故そうなるのかも知らない。(申し訳ない...) ちなみに欠点として露出不足や露出オーバーに弱いので使用はちょっと難しいが、使いこなせれば質はピカイチである。

さらに、ブローニー判フィルムを使う方法もある。これは、中判カメラとか大判カメラ用のフィルムで、普通使うフィルム(35mm判)より大きなフィルムである。大きなフィルムだと印画紙に印刷するときに拡大率が低くてすむので、結果的に高品質な写真が得られる。欠点は、カメラやレンズが大きくて重く、値段も高いこと。

 【注意】フィルムは化学反応によるものなので、劣化が結構ある。さらにカビに弱く、すぐカビる。ナマモノだと思った方がよく、冷蔵庫保存が望ましい。少なくとも風通しの良いところで保管すべき。ちゃんとしたカメラ屋さんではフィルムは冷蔵棚で売っている。ただし、冷蔵庫から出してすぐ使用すると冷たいフィルムに露が付くので、常温になってからフィルムケースを開けること。(ケース内は窒素充填されていて水分はないので結露しない。)

デジタルカメラとは?

デジタルカメラとは、フィルムの代わりに、光に反応する素子(イメージセンサー)をたくさん並べたものである。現在の主流イメージセンサーはCCDであるが、最近はCMOSが増えてきた。CCDもCMOSもその素子は光の強さを感知するだけなので、色は識別されず、結果、モノクロ画像になる。そのため実はデジタルカメラはもともとモノクロであった。昔はカラー画像が必要な場合は先述の三色分解を使い、コンピュータ上でカラー合成を行っていた。ちなみにデジカメの正式名称は、デジタルで動画を撮るカメラが「デジタルビデオカメラ」、静止画を撮るカメラは「デジタルスチールカメラ」で、原理はどちらも同じ。

いかに簡単にカラー画像を扱うか。これは、各素子に光の三原色のRGB各色のフィルター(原色フィルター)を付けることで現実化した。1画素に1色でR×1/G×2/B×1の4画素を1単位として(正方形にRG/GB。ベイヤー配列)全素子にフィルターを付けた。そして各素子の周りのデータから各色の隙間を補間して画像を作成している。つまり、例えば400万画素のカメラだと、赤100万画素、緑200万画素、青100万画素のデータを各色400万画素分に補間しているのである。だから正確には400万画素分の画質はない。他の配列としてGストライプ+RB市松配列というのもある。どちらにしろ、もともと無いデータを無理矢理作っているので、偽色(色ズレ)が発生しやすい。また、きめの細かいパターン的な画像では、合成時にモアレ(干渉縞)が発生しやすい。そのため、きめの細かい物の撮影には向いていない。具体的には広角レンズを用いた風景写真など。

ちなみに、フィルターでG(緑)が多めなのは、コントラストやシャープさは緑からの情報によるところが大きいためである。なぜかは知らないが、緑の情報がしっかりしていれば赤や青が多少ぼけていても全体の画像はそんなに問題ない。逆に、緑がだめだといくら赤や青がしっかりしていても全体的にぼやけた画像になってしまう。実際、人間の目も緑に対する感度が一番高くなっている。(白黒写真の世界では、コントラストを上げる時は緑や黄色のフィルターを使う。カメラや眼鏡のレンズのコーティングが緑っぽいのも、ものがはっきり見えるように緑の透過率を上げているため。)

光の三原色(RGB)の原色フィルターの他に、色の三原色であるC(シアン)M(マゼンダ)Y(イエロー)各色のフィルター(補色フィルター)を用いたものもある。C=G+B、M=R+B、Y=R+Gとなっているため、RGBに変換するときに色操作が複雑になり色の再現性が悪いが、RGB各色のデータが2ヶ所にあるため、補間によるきめの細かさの再現性は良い。しかし世間のユーザーはどちらかと言えば色にうるさいので、原色フィルターを使ったカメラが主流になっている。

デジカメの感度だが、これはノイズとの戦いになる。というのは、カメラの感度は実は固定されていて、どこまで画像処理して明るくできるか、という問題なのだ。その画像処理で各素子からの電気ノイズが目立ってしまうのである。電気ノイズは必ず出るものなのだが、これは発熱によるところが大きい。そのため、特に高感度が必要とされる天体写真の世界では、液体窒素による冷却CCDカメラがかなり昔から使われている。しかし一般のカメラで冷却装置を使うというのは非現実的である。そこでノイズと思われる部分をその周りの画像を用いてソフトウェア的に補正する技術(ノイズリダクション)が開発されてきた。しかし、これも無いデータを無理矢理作っているので、画質低下に繋がる。つまりノイズ低下が感度上昇にそのまま繋がるのである。ちなみに、画素数が増えるということは、1画素の大きさが小さくなることを意味するため、ノイズが目立ち、感度が下がる。

ソフトウェア的補正のような小手先な技術以外にも、様々な技術開発が進んでいる。例えば、補間せずに各色合成する。つまりRGB3色分の4画素1単位のデータを1ドットにしてしまうのである。これだと1ドットに3色分のデータがそのまま来るので今までより明るい画像が実現できる。補間しないので色ズレも起きにくい。これがフジの第3世代スーパーCCDハニカムのキャンドルショット機能である。欠点は、実際の画素数の3〜4分の1のサイズになってしまうことである。

最近、新しいイメージセンサーとしてCMOSを使った製品が多く出始めた。普通のデジカメだけでなく携帯電話内蔵デジカメにも採用されている。基本原理はCCDと同じだが、CCDより低消費電力で製造コストが低いのが売りである。低消費電力のため、小型化(高画素化)や高速読出が実現できる。しかしCCDより彩度が劣るらしい。「売り」はかなりの強味なので、この欠点を克服したCMOS搭載製品が今後の主流になるであろう。

デジカメは銀塩写真を超えられるか?

よく、「デジカメは何万画素で銀塩写真に追い付くのか?」と聞かれるのだが、これは非常に難しい問題である。解像度だけで考えれば、サービスサイズなら100万画素、2L判で150万画素、六つ切りで300万画素あれば、まあ我慢できるであろうか。しかし、発色やシャープさなどは画素数だけでは議論できない。要は、どのような写真が必要なのかによるのである。じゃあ、あなたが納得できるデジカメは?と聞かれると、また困ってしまう。とりあえず、NikonD1シリーズかな、と答えてはいるが。

デジカメによる画像は、カラー化やノイズ処理によってかなりいじられているため、きめ細かさが大事な広角レンズには向いていない。とりあえず、この問題が片付かないと満足はできないような気がする。

デジカメの分野では技術的にいつも一歩先に進んでいるデジタルビデオカメラの分野では3CCDカメラが普及している。これは、プリズムなどで光をRGB三色分解し、3つのCCDで各色の画像を取り込み、合成するものである。これは、全く補間する必要がないので、高画質が実現できる。この技術がデジタルスチールカメラに出てこないのは、カメラが大きくなる(ビデオカメラ並)、CCDが3つなので値段が高くなる、といった理由だろうか。ちなみに、時間差で3色分(3ショット)撮影して合成するカメラはあるらしい。

なんて考えていたら、画期的なデジカメが発表された。銀塩のレンズ/カメラメーカーで有名なシグマのSD-9である。(シグマのレンズは安いこともあって1つ持っているのだが、コントラストが低い感じがする。Nikonと較べるのが悪いって?) このデジカメは、カルフォルニアのベンチャー企業フォビオン社が開発した「Foveon X3」というイメージセンサーを使っている。今までと何が違うかというと、このイメージセンサーにはシリコンを使っていること。シリコンは、異なる波長(色)の光を異なる深さで吸収するという特性を持っている。具体的には、表面付近でB(青)、中間でG(緑)、一番深い所でR(赤)を吸収する。そこでイメージセンサーの各画素には3層のフォトディテクターがシリコン中の異なる深さに配置されていて、それぞれがRGB各色の光を感知し、合成する。つまり1画素でRGB3色を取り込むことができるのである。原理的には銀塩写真のフィルムと似ている。このカメラは今までのデジカメが問題にしていた色ズレ、モアレ、ノイズ、きめ細かさなどがすべて解決する代物である。銀塩カメラに代わるだけのポテンシャルがあると思う。(値段にもよるが。) まだ発売されていないので、実際の画像がどうなのかわからないが、かなり期待しているカメラである。

----------2002年4月3日
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